情緒不安定になるのはなぜか — 一日のうちに何度も気分が変わるとき
朝はわりと平気でした。昼過ぎまでもなんとかなっていた。それが三時ごろ、たいしたことのない一言で急に全部いやになる。夕方にはまた何ともなくなって、夜になると、昼間ピリピリしていた自分が恥ずかしくなります。
これが続くと、まず「自分がおかしいのか」と思います。まわりはみんな一日を平らに過ごしているように見えるのに、自分だけ上がったり下がったりしている気がして。ただ、波があること自体が問題であることは、思うより多くありません。たいていは波が大きくなりやすい条件のほうに体が置かれている状態です。
気分はもともと平らではない
人の気分は直線ではなく波に近いものです。問題は波があることではなく、波が大きくなったこと。同じ大きさのできごとが、昨日はさざ波だったのに、今日は船が揺れるほどになる。
だから聞くべきなのは「なぜ自分は感情的なのか」ではなく、「最近、何が波を大きくしているのか」です。こちらは性格よりずっと変えやすいものばかりです。
波を大きくする五つ
- 睡眠。いちばん大きくて、いちばん見落とされます。足りないと、感情にブレーキをかける部分から先に力を失う。だから怒りっぽくなるというより、わいた苛立ちが止まらなくなります
- 空腹とカフェイン。食事を抜いてコーヒーでもたせた日の午後にとくにピリつくのは、心の問題ではなく血糖と覚醒の問題です
- 飲みこんだままのものがひとつある。言わずに済ませたことがひとつあると、それと関係ない場面で見当ちがいに出ます。腹を立てた相手と、腹を立てた対象がずれる日はこれです
- 体の周期。生理前、季節の変わり目、昼夜が入れかわった週。周期的にくり返しているなら、記録するとすぐ見えます
- 決めずに引きずっていること。辞めるかどうか、この関係を続けるかどうか。決めないまま長く抱えていると、一日じゅう裏で力を使います。残りが少ないので、小さいことに大きく反応します
五つのうち三つが重なった日は、誰でも揺れます。もともと繊細な人がいるのではなく、揺れやすい日があるのです。
揺れはじめた、その場でできること
わいた感情を無理に下げようとすると、たいてい大きくなります。目的は消すことではなく速度を落とすことです。
- 名前をつける。「いやな気分」ではなく「軽く扱われた気がして、さびしい」まで進めてみる。ひとまとめの感情より、名前のついた感情のほうがずっと早く静まります
- 先に体を確かめる。最後に食べたのはいつか、昨夜は何時間眠ったか。驚くほどよく、答えがここにあります
- 十分だけ後まわしにする。いま送りたいメッセージ、いま言いたいことがあるなら十分だけ待つ。なくすのではなく延ばすだけなので負担が軽いです
- 場所を変える。外に出て風にあたる、別の部屋に移る。景色が変わると感情もひと目盛り下がります
- 一行だけ書く。「いま___のせいで___だ」。頭の中で回っているあいだは大きくなり続け、文になった瞬間に大きさが決まります
かえって波を大きくすること
- 気分に合わせて大きな決断をする。感情が頂点にあるときの決定は、たいてい翌日に取り消すことになります
- 「こんなのだめだ」と自分を責める。感情の上に罪悪感がもう一枚のって、二つ処理することになります
- 調子のいい日にまとめてやる。二日分を片づけた翌日は、底がもっと深くなります
- お酒で片づける。その夜は抑えられますが、翌日は波が大きくなって戻ってきます
- 完全に隠しきる。漏れるところがないと、結局は一度に大きく出ます
長い目で波を小さくする
- 起きる時間を固定する。寝る時間より起きる時間をそろえるほうが、はるかによく効きます
- 二週間だけ記録する。日付、その日の睡眠、気分を一行。これだけで、自分の波がでたらめに来るのではないと見えてきます
- 決めていないものをひとつ決める。結論でなくてかまいません。「今月末までに決める」と期限を切るだけで、裏で使われていた力が戻ってきます
- 吐き出す場所をひとつ持つ。毎回カウンセリングでなくてもいい。その日飲みこんだものをどこかに置く習慣がひとつあるだけで、ずいぶん違います
相談したほうがいい目安
次に当てはまるなら、ひとりで調整するより専門家と一緒に見るほうが早いです。
- 波が二週間以上続いて、仕事・学校・睡眠・食事が崩れている
- 数日のあいだ理由もなく高揚し、ほとんど眠らなくても平気な時期があり、そのあと深く落ちこむ
- 感情がわいたときに物を壊したり、自分を傷つけたりしたことがある
- 近い関係がこれが原因で何度も切れている
- 消えてしまいたいという考えが浮かぶ — これは待たずに、いま相談してください
二つめは、ふつうの気分の波とは分けて見たほうがいいサインなので、一度確かめておくと安心です。
話す相手がいないとき
気分の波が大きい人がそろって言うことがあります。言うのが申しわけない、と。昨日も苦しいと言ったのに今日もそうだと、相手が疲れてしまいそうで。それで飲みこんで、飲みこんだぶん次の波が大きくなります。
そういうとき、最初に出す相手が人である必要はありません。紙でも、メモアプリでも、名前を出さずに書ける場所でもかまわない。大事なのは、頭の中だけで大きくなっていたものを外に出して文にすることです。文になった時点で、それは自分を揺らす波ではなく、自分が見ている波になります。
ひとりで抱えてきたことがあるなら、名前を出さずに書いてみるのもひとつの方法です。
つらさが続くときは、ひとりで抱えないでください。
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